産経抄

6月18日

 薩摩焼の陶郷である苗代川(なえしろがわ)は、鹿児島市から車で西へ40分ほどの丘陵地帯にある。十四代沈寿官(ちん・じゅかん)さんが、いつものように仕事をしていると、お手伝いさんが飛び込んできた。

 ▼「庭に頭の毛が真っ白な変な人がいる」。司馬遼太郎さんだった。「焼酎でも飲みますか」「飲みましょう」。2人は日が暮れるまで語り合った。沈さんを主人公とする小説『故郷忘(ぼう)じがたく候(そうろう)』が雑誌に掲載されたのは、それから2カ月後である。