学業であれ事業であれ、命懸けで立てた志ほど強いものはない。知られた詩の一節がある。〈学もし成らずんば死すとも還(かえ)らじ…人間(じんかん)/到(いた)る処(ところ)/青山(せいざん)有り〉。幕末の志士、村松香雲が15歳で郷里を発(た)つ日に詠んだとされる。
▼志を遂げずには故郷に帰るまい。世間のどこにでも死に場所(青山)はある、と。青年の胸を焦がすのは、時代が与えた覚悟の炎だろう。赤々とした情念がそこに見える。自分の命、あるいは命に等しいものを犠牲にしても成し遂げたい何事かは、昭和39(1964)年の日本にもあった。