産経抄

9月8日

 歌人の俵万智さんに、わが子の命名を詠んだ一首がある。〈とりかえしつかないことの第一歩 名付ければその名になるおまえ〉。三十一文字の向こうに、命名の筆を持つ親の震えを見るようで、鼻がつんとなる。

 ▼名前とは、親から子への最初の贈り物である。やり直しも替えも利かない贈り物である。振り仮名なしには読めない現代風の名前も、二つとない命に込めた親の願いを映し出す鏡だろう。この母親も〈その名〉になるのを願い、子に名前を贈ったのではなかったか。