産経抄

9月22日

 「血液型を調べる必要がある」と医師に言われ、おじさんは右の腕を差し出した。「型が違う」と首を振る医師に、「僕の血が違うたあ何だ」とおじさんは納得がいかない。「もう一度、左からとってみてくれ」。

 ▼サトウハチローの童話『僕等の拍手』の一こまだという。国語学者、中村明さんの『日本語のおかしみ』(青土社)から孫引きした。よほど慌てていたか、頭に血が上っていたのだろう。左から採ったところで血液型は変わらない。違えば、それこそ大騒ぎになる。