産経抄

9月25日

 昭和の昔、海外旅行がまだまだ高嶺(たかね)の花だったころ。わざわざ東京・神保町の大きな書店まで出かけてトーマス・クックの時刻表を手に入れ、まだ見ぬ欧州を疾走する特急列車に乗った気分になった鉄道愛好家も少なくなかった。

 ▼トーマス・クックという社名は、創業者の名前に由来している。19世紀の英国で禁酒運動を推進したバプテスト教徒だった彼は、ふとしたことから禁酒主義者向けの団体旅行を思いつき、世界初といわれる旅行代理店を始めたのが、1841年。日本はといえば、天保年間のころで、しばらく後に黒船がやってきて幕府が倒れようとは、お釈迦様でも気がつかない時代だった。