産経抄

9月29日

 将棋の米長邦雄永世棋聖には、名人戦に6度挑んで6度敗れた過去がある。7度目の挑戦に際し、二回り下の羽生善治氏らに頭を下げて教えを請うた。最新の戦術を手に、悲願をかなえたのは平成5年5月だった。

 ▼ありし日に語った勝負哲学に「微笑(ほほえ)みと謙虚」がある。勝利の女神を味方に付けるには不調のときこそ笑い、運が上向きのときは腰を低くする。「女神に好かれさえすれば、私だって名人になれる」と。49歳11カ月での名人獲得は史上最年長記録としていまも残る。