産経抄

10月1日

 直木賞作家で実業家でもあった故邱永漢(きゅう・えいかん)さんは70年前、香港で暮らしていた。生まれ故郷の台湾で独立運動に関わり、国民党政府ににらまれて亡命していた。やがて大陸は共産党の天下となり、香港は逃げ出してきた難民であふれかえるようになる。

 ▼1997年の香港の中国返還を目前にして、邱さんは再び、香港に移り住む。当時中国の統治を恐れて、多くの人が海外に脱出した。邱さんは、香港の将来を楽観していた。「中国大陸でも言論は自由化の方向に向っているし、人権問題も少しづつ改善される方向である」(『1997香港の憂鬱』)。