産経抄

10月9日

 ノンフィクション作家の足立倫行(のりゆき)さんは、常々不思議に思っていた。日本各地を旅していると、いたるところで「名物イカ焼き」の看板を見かける。なぜ日本人はこれほどイカを「偏愛」するのか。

 ▼世界有数のイカの漁場である日本海で取材を始めた。昭和59年から翌年にかけて、各地の漁港からイカ釣り船に乗り込んだ。その体験をまとめた『日本海のイカ』は、次の文章で結ばれる。「僕は今、イカそのものが日本および日本人を語る際の代名詞になり得るのではないかと考え始めている」。