産経抄

10月11日

 今年のノーベル化学賞の受賞が決まった吉野彰さん(71)は昭和60年ごろ、さかんに「三種の鈍器」という言葉を口にしていた。「三種の神器」をもじった造語である。当時、大手化学メーカーの旭化成に入社して10年あまり、新型電池の開発に取り組んでいた。

 ▼「鈍器」とは、銀塩写真フィルムとレコード、そしてエジソンが原理を発明したニッケル・カドミウム二次電池(蓄電池)を指す。いずれもエジソンが活躍した1900年前後に世に出て以来、100年近く使われてきた。もっとも、「この3つは近く、まったく新しいものに取って代わられる」というのが、吉野さんの持論だった。