産経抄

10月18日

 日本国憲法が禁じている「検閲」が、最近注目されている。14日に閉幕した「あいちトリエンナーレ2019」の企画展、『表現の不自由展・その後』のおかげだ。

 ▼先月末、朝日新聞の天声人語が、作家の石川達三の『生きている兵隊』を取り上げて、この問題を論じていた。日中戦争に従軍して書き、検閲を恐れて要所を伏せ字にせざるを得なかった作品である。ただ石川が、戦前の言論統制の被害者と決めつけるのは早計だ。『言論統制』(佐藤卓己著)には、石川が雑誌に発表したこんな文章が引用されている。「極端に言ふならば私は、小説といふものがすべて国家の宣伝機関となり政府のお先棒をかつぐことになつても構はないと思ふ」。