ゴッホはひまわり、モネは睡蓮(すいれん)を愛した。「リンゴ一つでパリを驚かせたい」と言ったのは、セザンヌだった。秋の果実だけで約200点の絵を残し、後にパリの画壇どころか世界中の賛美を受けた「リンゴの画家」である。
▼画布の上に見るのは、つややかで鮮度に満ちたそれではない。果実は濃淡や陰影を帯びた赤で描かれ、一つ一つが物憂げである。「リンゴの周りの空気も描いている」はピカソの評だが、素人の目には判然としない。物言わぬ果実の声が、筆を執るセザンヌには聞こえていたのだろうか。
ゴッホはひまわり、モネは睡蓮(すいれん)を愛した。「リンゴ一つでパリを驚かせたい」と言ったのは、セザンヌだった。秋の果実だけで約200点の絵を残し、後にパリの画壇どころか世界中の賛美を受けた「リンゴの画家」である。
▼画布の上に見るのは、つややかで鮮度に満ちたそれではない。果実は濃淡や陰影を帯びた赤で描かれ、一つ一つが物憂げである。「リンゴの周りの空気も描いている」はピカソの評だが、素人の目には判然としない。物言わぬ果実の声が、筆を執るセザンヌには聞こえていたのだろうか。