産経抄

11月3日

 明治維新から日露戦争までの30年余りの日本を、司馬遼太郎は野球にたとえている。主力産品の米と絹をエースとたのみ、欧米の向こうを張ろうと目いっぱい背伸びする。「人口五千ほどの村が一流のプロ野球団をもとうとするようなもの」だと。

 ▼作家の微苦笑が目に浮かぶ。「この時代のあかるさは…楽天主義(オプティミズム)からきている」とも司馬は書いた(『坂の上の雲』第一部あとがき)。誰もが先進国に肩を並べる日を信じ、国家というチームの強化に突き進む。見上げた空は目にしみる青、そんな時代だったろう。