産経抄

11月19日

 イエズス会の黒衣をまとった聖者は、心臓に十字架を刺したまま、天を仰ぎ見ている。歴史の教科書でおなじみの「聖フランシスコ・ザビエル像」である。日本に初めてキリスト教を伝えた宣教師がなんと、エクスタシーにひたる姿を表した図だという。

 ▼カトリック神学が専門の菊地章太(のりたか)さんによれば、「ザビエルは、神の恩寵(おんちょう)に照らされて身も心もとろけるような恍惚(こうこつ)に身をゆだねている」。エクスタシーはもともと、魂が体の外に飛び出した状態をいう。「宗教にとっては、もっとも本質的な要素のひとつ」(『エクスタシーの神学』ちくま新書)。