産経抄

11月24日

 中国の歴史書などに「忘年之交(ぼうねんのまじわり)」という四字熟語がある。自分が老いたのも忘れ、学識や才能のある若者と付き合う楽しみを表した言葉だという。「その年の苦労を忘れること」を指す「忘年」は日本固有の用例らしい(園田英弘著『忘年会』)。

 ▼井原西鶴は〈晦日には年わすれとて、隙なる年寄友達をよびあつめ…〉(『西鶴織留』)と書いている。この後、汁物や魚の焼き物を振る舞い、酒を飲んで大笑いしたと続く。元禄文化の華やかな頃、庶民は忙しく、年も押し詰まってからようやく年忘れとなった。