産経抄

1月5日

 「裸足(はだし)の哲人」と呼ばれたマラソンのアベベ・ビキラ(エチオピア)に、靴にまつわる挿話がある。1960年のローマ五輪を素足で駆け抜け、名声を得た金メダリストは当初、靴を履いて走る予定だったという。

 ▼故郷では裸足での練習が日常だった。大舞台での体面が気になり、慣れぬシューズで試走を重ねたものの、足が受け付けない。裸足は思案の末の選択だったと聞く。記録と用具の結びつきを断ち難い現代から見れば、靴の有無を問わぬ「哲人」の快走は神話だろう。