産経抄

1月12日

 オーストラリアのアボリジニには、ユーカリの森や草原に火を放つ営みがある。「ブッシュファイア」という。落ち葉や下草を焼いた跡は新芽の育ちが促され、動物の餌場となる。そこに寄ってきた獲物を狩り、胃袋に収めるという流れである。

 ▼人間を大自然の一部と信じるアボリジニには、絶対不可侵の領域もある。悪霊が住むとされる熱帯雨林は、その一つだという。そこに火を放てば失明するとの口碑は、「むやみに火を使うな」という戒めでもある(小山修三、窪田幸子編『多文化国家の先住民』)。