産経抄

1月26日

 戦場で極限状態に置かれた兵士が取る行動は、砲弾が地面に開けて間もない穴に身を隠すことという。

 ▼〈大砲の玉というものは、二度と同じ穴に墜ちることはめったにない〉。第一次大戦を一兵卒の視点で描いた『西部戦線異状なし』(レマルク著、秦豊吉訳)の一節にある。一理あるように思えるものの、主人公はやがて迷信にすぎないと気づくことになる。砲弾の雨、銃弾の嵐から生きて逃れるのは〈偶然あるのみだ〉と。