産経抄

2月9日

 土俵上の力士にとって、独り相撲ほど悲しいものはない。的をめがけて頭からぶつかったはずが、相手にかわされもう止まれない。体は前にのめり、焼けた鉄板の上を渡るように、たたらを踏む場面をよく見かける。

 ▼「たたら」は「ふいご」の異名だという。さしずめ、足踏み式の送風機である。日本に古くから伝わる製鉄方法では、鉄を製錬する炉の温度を上げるため、足でたたらを踏んでは風を吹き込んでいた。その動きが、勢い余って空足を踏むようすと似ていたのだろう。