産経抄

2月16日

 紅灯の華やかな街で、酔漢同士の取っ組み合いを見たことがある。片方がもう一方の上になり、何かを相手の鼻面に投げつけた。自分の名刺らしい。律義なことに、社名と役職まで名乗ったご仁はさらに畳みかけた。「お前、名刺を出してみろ」。

 ▼気炎を吐いた人は、当方より一回りは上だったろう。酔態はもとより、けんかで肩書をたのむ不作法に閉口した覚えがある。「ああいう大人にはなりたくないな」と鼻白む友人に相づちを打ち、その場から退散した。社会に出て間もない頃で、30年近くも前になる。