産経抄

2月28日

 斎藤茂吉は生涯で1万7千余の歌を残した。晩年の作品のなかには、思わず噴き出してしまうものも多い。<濃厚の関係にある面相に熱海の道をつれだち歩む>。たとえば戦後まもなく熱海で静養していた折に詠んだ、一首もその一つである。

 ▼熱海といえば、かつては新婚旅行で有名だった。散歩の途中に出会ったのだろう。茂吉は、一組のカップルの「面相」をじっと観察する。濃厚の関係の2人は新婚か、それとも不倫だろうか。大真面目に推理する茂吉の姿が目に見えるようだ。