産経抄

3月15日

 ものの数え方はおもしろい。同じ花でも、花びらは「片(へん)」という単位を使って一片、二片と数え、花が開けばおなじみの「輪(りん)」と数える。〈梅一輪一りんほどのあたゝかさ〉。芭蕉門下の人、服部嵐雪の句にある。

 ▼まだ一輪だけだが、もうその一輪だけの暖かさは感じさせてくれる-。そんな句意だという。詩人の大岡信さんは、これを晩冬の句と解説していた。寒さに震える一輪は、なるほど春隣を告げるほの明かりでもあるのだろう。花満開では、この暖かみは伝わらない。