幕末の思想家、吉田松陰の行動力には、かぶとを脱ぐ。20歳のときに九州に遊学したのを皮切りに、日本全国をひたすら歩き回った。行程をあわせると、1万3千キロにも及ぶ。旅の先々で、学者に教えを請い、多くの詩を詠んだ。ついにはアメリカへの密航を企てて失敗、長州藩の獄舎、野山獄に投じられる。
▼松陰は意気消沈するどころか、囚人たちに『論語』を講じ始めた。自身も書道や俳句を習った。師匠が弟子を一方的に指導するのではなく、互いの知識を教えあう。明治の元勲を数多く育てた松下村塾の原型となったことは、よく知られている。