産経抄

5月17日

 左手にはめた腕時計を、鏡の向こうの自分は右手にはめている。鏡に映った自分の姿が、左右逆さまに見えるのはなぜか。実は、知らず知らずのうちに行う視点の切り替えが、見え方にかかわっているのだという。

 ▼実物の自分という視点から判断すれば、腕時計は「左」にある。鏡に映った自分の視座に立てば「右」になる。左右反転は、無意識に切り替える視点の産物という(高野陽太郎著『鏡映反転』岩波書店)。自分を外から見つめる目が、人に備わっている証しだろう。