産経抄

5月19日

 中国文学者、井波律子さんの訃報が届いた。コラムのネタに困るたびに手に取ったのが、井波さんの著作である。中国の長い歴史は、英雄から大悪人まで多彩な人物を生み出してきた。井波さんは、彼らが残したエピソードをわかりやすく紹介してくれるからだ。

 ▼たとえば、現在の四川省の住民の皆殺しを図った、明末の反乱軍のリーダー、張献忠(ちょう・けんちゅう)である。「あいつを『収拾(ショーシ)』してくれ」という言い方で部下に殺害を命じた。この人物から連想したのが、オウム真理教の元教祖、麻原彰晃元死刑囚である。地下鉄サリン事件の報告を受け取ると、「ポアしてよかったね」と喜んだ。