産経抄

5月21日

 <久方のアメリカ人のはじめにしベースボールは見れど飽かぬかも>。作者の正岡子規は、大の野球好きだった。幼名の升(のぼる)にちなみ「野球(のぼーる)」を雅号にしたほどだ。もっとも、ベースボールを野球と訳したのは、子規の後輩で一高ベースボール部員だった中馬庚(かのえ)とされる。

 ▼テニス、サッカー、ラグビーなど、欧米発祥のスポーツはカタカナ表記が普通だが、野球だけは漢字が定着した。それだけ、日本文化に深く溶け込んだといえる。汗と涙と泥にまみれたユニホームと全力プレーが感動を呼ぶ高校野球は、その最たる例である。