産経抄

5月31日

 天皇の大臣任命式は歴史が古く、『徒然草』の第百一段にも描かれている。

 ▼いわく進行役の公卿(くぎょう)が、任命の詔が書かれた「宣命」をうっかり持参し忘れ式に臨んだらしい。窮地を救ったのが忘れ物を届けた「衣被(きぬかずき)の女房」、つまり衣で顔を隠した女官である。当時の婦女子は顔を出すのを恥じ、衣被で人前に出る風習があった。見えても見えないように装うのが、世のエチケットだったという。