昭和の名棋士、藤沢秀行さんといえば、酒、ギャンブル、女性関係なんでもござれの豪快な生き方で知られた。囲碁を通じて政界にも交友関係を広げていた。なかでも親しかったのが、ロッキード事件で田中角栄元首相の逮捕を許可した稲葉修元法相だった。
▼わずか4子のハンディで秀行さんと打っていた稲葉さんは、かなりの棋力である。ただ秀行さんによれば「いつも貧乏して、選挙にも弱かった」。一度選挙の応援を頼まれたものの、酔っ払って何をしゃべったか覚えていない。「かえって票を減らしたのではないかと心配になった」と著書で振り返っている。