産経抄

6月21日

 復員した健太郎は、投手としてプロ入りを目指している。入団テストの登板日に、鳴り物を持ち込み応援してもいいか。そう願い出る友人たちを、健太郎はやんわりと制した。「球場は静かな方がいいんです」。井上ひさしさんの舞台『闇に咲く花』である。

 ▼投手は捕手のミットが立てる音で、その日の調子を測る。野手は乾いた打球音で、ボールの飛ぶ先に目星をつける。「観衆にしても、あのカーンという音が聞こえなければつまらないでしょう」と。作家の本音を劇中の人に語らせた観はあるものの、鳴り物不要のお説には深くうなずく。