産経抄

7月14日

 歌壇の大御所である岡井隆さんは、かつて寺山修司さんや塚本邦雄さんらとともに「前衛短歌運動の旗手」と呼ばれていた。前衛短歌は、写実を旨としてきた伝統的な短歌に対して、虚構を持ち込み政治や社会をも大胆に詠むのが特徴とされる。

 ▼岡井さんにとっての「政治や社会」には、旧制高校の物理学の講義で学んだ原子力も含まれていた。<亡ぶなら核のもとにてわれ死なむ人智はそこに暗くこごれば>。昭和58年ごろの作品である。核エネルギーには、暗く危険な部分があっても、人間の英知が凝縮している。皮肉を込めながらも、平和利用の推進に賛同していた。