産経抄

7月30日

 松尾芭蕉が山形県大石田町を訪れたのは、元禄2(1689)年の夏である。当地で詠んだ句は、「五月雨(さみだれ)を集めて涼し最上川」。『おくのほそ道』を編纂(へんさん)する際に「涼し」を「早し」に置き換える。最上川の川下りを経験して、流れの「早さ」を実感したからだといわれる。

 ▼「ずんずんと夏を流すや最上川」。204年後、正岡子規は俳聖の足跡をたどる東北の旅の途中、大石田に一泊してこの句を残した。歌人の斎藤茂吉も終戦直後に滞在している。「最上川逆白波(さかしらなみ)のたつまでにふぶくゆふべとなりにけるかも」。季節は冬だが、五月雨の句と同じく水の勢いの激しさに着目している。芭蕉の名句と張り合う気合がこもった名歌として名高い。