産経抄

8月4日

 平成29年の春場所千秋楽。横綱稀勢の里は、横綱日馬富士との取組で肩を強打して左腕がほとんど使えない状態だった。単独トップの大関照ノ富士が、圧倒的に有利である。

 ▼ところが直接対決では、手負いの稀勢の里が本割と優勝決定戦で連勝する。翌日の小紙スポーツ面は、19年ぶりの「日本出身新横綱」による「奇跡の逆転優勝」をたたえる記事で埋め尽くされた。「悪夢のような結末に何を思ったか」。照ノ富士については、こんな書き出しで始まるコラムで、触れられるのみである。