産経抄

8月14日

 香川県三豊(みとよ)市で今年100歳を迎えた政本道一さんは、陸軍の衛生兵として出征した。ニューギニアの病院に運ばれてくる兵士は、「目玉の飛び出た人、手の無い人、頭の砕けた人など、人間の形を保っていな」かった。病院が解体されると、移動できない患者には自決が命じられた。政本さんが一人の重傷者を背負って歩き出すと、患者は小さな声で母を呼び続け、やがて息絶えた。

 ▼京都市に住む緒方久和子さん(91)は、勤労学徒報国隊員として、広島県の呉海軍工廠(こうしょう)で、特攻魚雷回天の部品製作に携わっていた。少女たちはわずかな休憩時間を使って、特攻隊員のために毛糸でマスコット人形をつくり、座席に敷く座布団を絹で縫った。