産経抄

9月6日

 人にはそれぞれ「母語」がある。〈幼い頃に自然と身につけた最初の言語〉と手元の辞書にあり、作家の井上ひさしさんは〈お母さんや愛情をもって世話をしてくれる人たちから聞いた言葉〉(『日本語教室』)と滋味に富んだ語釈を残している。

 ▼大方の人は、井上さんの解説に二重丸をつけてうなずくはずである。英語で「マザータング(母の舌)」と書くことを思い合わせれば、母国語との違いもよく分かる。中国・内モンゴル自治区に生まれた文化人類学者の楊海英氏にとって、母語はモンゴル語である。