産経抄

9月20日

 世界に言語が一つしかなかった頃の話という。人々は広い平野に街を造り、巨大な塔の建設に着手した。「天まで届く塔を築き、私たちの名を残そう」と。その企てに神は眉をひそめ、地上に多くの言語をまき散らした。

 ▼人々の混乱は言うに及ばず、塔は未完のまま砂塵(さじん)の中に姿を消し、行方は知る由もない。『旧約聖書』の中でもよく知られた「バベルの塔」の物語である。千古、塔は人のおごりを表し、聖書は神の裁きをもって戒めとした。それでも人は天を目指す-ものらしい。