産経抄

10月18日

 司馬遼太郎や井上靖をはじめ、元新聞記者の肩書を持つ作家は多い。『銭形平次』を生んだ野村胡堂も、創作活動を続けながら60歳まで新聞社に勤めた。胡堂によれば、昔の記者は劇評を書くにしても招待切符など使わず、自腹で観劇したという。

 ▼「名のある新聞の記者ほど清廉なものはない」と随筆にある。戦前の社会部長時代には盆と暮れに進物が届くのも珍しくなく、一つ一つを送り返したとの挿話も残る。胡堂にかぎらず昔の新聞人は、気骨という太い一本の線を取材対象との間に引いていたのだろう。