産経抄

10月29日

 全日本空輸(ANA)の創業者は、朝日新聞の社長も務めた美土路昌一(みどろ・ますいち)である。敗戦後、GHQは日本のすべての航空事業を禁止した。美土路は、失業したパイロットや航空整備士を救済するための組織「興民社」の会長を引き受ける。

 ▼美土路の評伝『現在窮乏 将来有望』(早房長治著)によれば、興民社は「何でもやる、たくましい会社」だった。旧陸軍から払い下げられたトラックを利用したタクシー業や運送業から、地方で食料を集めて東京の闇市で売る商売にまで手を出した。