産経抄

11月1日

 学問の心得がある者は、寺子屋で子供たちに読み書きを教えた。手先の器用な者は花札の絵を描き、金魚やコオロギを育てては町人に売る者もいた。これらは全て、江戸時代の下級武士が精を出した内職だという。

 ▼庶民の間にはやったアサガオも、元をたどれば御家人たちが拝領屋敷で栽培に励んだものである。おのが仕事に「天職」と胸を張るどころか、あまたの下級武士は「手に職」をつけて糊口(ここう)をしのいでいたのが実相らしい(『大江戸 武士の作法』小和田哲男監修)。