産経抄

11月17日

 喫茶店で向かい合って座っていると、不意に「あなたがだんだん遠くなる」と言って、そのまま気を失ってしまうことが何度もあった。没後10年になる歌人の河野(かわの)裕子さんの女子大生時代のエピソードである。

 ▼そんな時、後にやはり歌人で夫となる永田和宏さんは、河野さんを両手で抱え上げ、事務室などに運び込んで休ませてもらった。河野さんは高校時代に神経の病気で入院し、1年休学している。失神はその後遺症のようだった。本人にとっては、つらい過去である。