産経抄

11月29日

 作者不詳の戯(ざ)れ歌をひとつ。〈春つばき夏はゑのきに秋ひさぎ/冬はひらぎに同(おなじく)はきり〉。何のことかさっぱり、という方はそれぞれの字に「木」を添えていただくと読みやすい。椿(つばき)、榎(えのき)、楸(ひさぎ)、柊(ひいらぎ)、桐(きり)。昔の子供は短歌のリズムで漢字の読みを覚えたという。

 ▼いたずら好きはいるもの、戯作者(げさくしゃ)の式亭三馬は「●(にんべん)」のパロディーをこしらえた。▲、△、◎、○。「うわき・げんき・ふさぎ・いんき」と読ませ、ご丁寧にも、元歌と同じ韻を踏んでいる。人の性(さが)をちくりと刺した「▲」の読みも小気味いい。あとの字は説明不要だろう。