産経抄

1月1日

 「午前八時起床、直ニ身体ヲ清メ朝食ヲ畢(おわ)リテ後、家人ノ年賀ヲ受ク」。昭和5年1月1日、渋沢栄一が日記をこう書き始める。まもなく年賀の客がやって来る。午前11時には、自ら設立した第一銀行に向かう。

 ▼頭取以下行員たちと祝杯を挙げて、訓示を垂れる。銀行を出て、孫一家の家に寄って帰宅すると、また多くの客の相手をする。夕食の後はラジオを聞いて、就寝するのは夜11時。さすが「四十、五十は洟(はな)垂れ小僧」と喝破した人物である。89歳の老人とは思えない多忙な1日を過ごしている。