産経抄

1月3日

 偏屈者の八五郎が新年の賀詞を述べにやって来た。減らず口をたたけば鬼も黙るという口達者に、家の主人が吹っ掛ける。「よく来た。フグを食おう」「食わぬ」。実は八五郎、毒にあたらないかとおびえている。

 ▼「怖いか」「怖くない。食べ慣れていないものだから」。その代わり、足が4本のものなら食べると言う。「牛でも馬でも、なんでも」。にやりとした主人は、ここぞと畳みかけた。「それなら、こたつにも足が4本ある。これを食ってみろ」。江戸の小噺(こばなし)である。