産経抄

1月13日

 「雪は天から送られた手紙である」。この言葉で知られる物理学者の中谷(なかや)宇吉郎は、世界で初めて人工的に雪の結晶づくりに成功した功績で知られる。中谷は雪国での人々の暮らしにも無関心ではいられなかった。

 ▼昭和13年の冬、新潟県内の農村で目撃した光景を随筆に書き残している。村役場に小学校の校長が相談に来ていた。学校の建物が屋根に積もった雪の重みでミシミシ鳴っている。子供たちの生命にはかえられないが、雪下ろしの費用が捻出できないというのだ。