仏文学者にして昆虫博士の奥本大三郎さんは子供の頃に何度も夜更かしを試みた。チョウの羽化を見届けるためだが、眠りの誘惑に勝てない。チョウは明け方に蛹(さなぎ)を抜け出し、少年が目覚める頃には飼育箱の中でバタバタ…。
▼暗い時間を選ぶ羽化の不思議を、奥本さんはこうつづる。「明け方というのが一番安全な時刻であるからなのか」「生物(いきもの)の誕生と潮の満干(みちひ)との間に何か関係でもあるからなのか」(『奥本昆虫記』)。薄い皮膜に守られながら、羽は人知れず形作られている。神秘の手品というほかない。
仏文学者にして昆虫博士の奥本大三郎さんは子供の頃に何度も夜更かしを試みた。チョウの羽化を見届けるためだが、眠りの誘惑に勝てない。チョウは明け方に蛹(さなぎ)を抜け出し、少年が目覚める頃には飼育箱の中でバタバタ…。
▼暗い時間を選ぶ羽化の不思議を、奥本さんはこうつづる。「明け方というのが一番安全な時刻であるからなのか」「生物(いきもの)の誕生と潮の満干(みちひ)との間に何か関係でもあるからなのか」(『奥本昆虫記』)。薄い皮膜に守られながら、羽は人知れず形作られている。神秘の手品というほかない。