小人たちが階段を上っていったはずが、なぜかもとの階に戻っている。迷路に入っていくと、いつのまにか天地が反対になっている。昭和43年に出した『ふしぎなえ』は、安野光雅さんの絵本作家としてのデビュー作となった。
▼摩訶(まか)不思議な世界の原点は、島根県津和野町で過ごした少年時代にある。畳の上に鏡を置き、その中をのぞき込んで遊んでいた。全てが逆さまになって、天井が床になった地下室が出現したように見える。ある日弟に告げた。「わが家には実は秘密の地下室があり、金銀財宝が詰まっている。でも、これは絶対の秘密だよ」。弟の驚いた顔を見ると、ますます空想が広がっていく。