産経抄

2月14日

 江戸の儒学者、佐藤一斎は警句の名手としても名高い。その一つ。〈箴(しん)は鍼(しん)なり。心の鍼(はり)なり〉。先人の残した箴言(しんげん)は、心に施す鍼治療のようなものだ、と。続けて「よこしまな思いが芽生えたら、箴言を念じて自戒せよ」と処方箋も示している。

 ▼人の心を刺して戒める「箴」。患部に刺して治す「鍼」。どちらも「はり」の訓読みがあり、気の利いた警句といえる。著書『言志後録』には、気分が優れなければ胸に十数本の鍼を刺し、病の予防に努めた-と体験談もつづっている。一斎は鍼治療の信者だった。