産経抄

3月5日

 今月1日に107歳の大往生を遂げた篠田桃紅(とうこう)さんは、5歳で父から書の手ほどきを受けた。ただ、お手本をなぞって書いていても飽き足りない。たとえば、縦線を3本引く川という字でも、線を4本も5本も書きたくなる。

 ▼もっと自由でいいのではないか。後に国際的に高い評価を受けるようになる、墨による独自の抽象表現の出発点である。一切の美術賞を断ってきた、孤高の芸術家としての生き方にもつながっている。