産経抄

4月15日

 門井慶喜さんの歴史小説『家康、江戸を建てる』に、こんな場面がある。天下を手中に収めた徳川家康は慶長11(1606)年、江戸城の大幅な拡張工事に取り掛かる。監督を命じられたのは、築城の名手として知られた藤堂高虎だった。

 ▼ある日、石垣の前で工事の進捗(しんちょく)状況を説明する高虎に対して、家康は突然怒りだす。高虎のひたいを白扇で打って言い放った。「肝心なのは速さなのじゃ、はよう、はよう石を積んでしまえ」。この石垣も、家康に急(せ)かされて築造されたのかもしれない。