産経抄

4月25日

 詩人の中桐雅夫に『卑怯者』という、身を切り刻むような一編がある。〈おれたちはみな卑怯者だ、/百円の花を眺めて百万人の飢え死を忘れる〉(詩集『会社の人事』所収)。店先で花を求めるとき、「その金で救える命がある」と思う人はそういない。

 ▼この詩にほろ苦さを覚えるご同輩は、多いだろう。一皿のつまみ、一杯のビール。紅灯の街でひととき鬱を散じ、憂いを忘れるためグラスを傾ける。喉の奥へと泡を流し込むとき、この星のどこかで起きている悲劇を思う人はまずいない。人は誰もが「卑怯者」か、その予備軍に違いない。