明治の豊かな言論を取り戻せ 日本大学教授・先崎彰容

正論
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日本大学教授・先崎彰容氏

日本大学教授・先崎彰容氏

 ≪人格攻撃が先鋭化する日本≫

 先日、筆者はある座談会に出席した。「近代日本一五〇年」をめぐり、保守主義の立場から意見を述べるよう依頼を受けたのである。昨今の政治状況は「愛国VS左翼」「保守・自民党VSリベラル・立憲民主党」のような、極端な二項対立にはまり込んでいる。結果、内政外交に課題が山積であるにもかかわらず、些末(さまつ)な人格攻撃がマスコミをにぎわしている。北朝鮮の動きを注視せねばならないときに、トップニュースが性的不祥事で埋め尽くされている。

 こうした「1億総週刊誌化」した現状では、世の中の出来事を、善悪で明瞭に腑分けし、「悪い」奴をやり玉にあげることばかりに時間が費やされる。貧困な言葉が空中戦をくり広げている現状を、少しでも俯瞰(ふかん)してみたい。こうした思いが、明治維新から150年という節目も意識し、座談会を組んだ趣旨だと聞かされていた。