東京宣言の方針転換は“敗北”だ 新潟県立大学教授・袴田茂樹

正論
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会談前にロシアのプーチン大統領(右)と握手する安倍首相=14日、シンガポール(共同)

会談前にロシアのプーチン大統領(右)と握手する安倍首相=14日、シンガポール(共同)

 ロシアとの領土交渉でわが国の方針に大転換がなされた。その重大な問題点を指摘したい。その前に、安倍晋三首相および父の故晋太郎氏に関して一言。晋太郎氏が外相として訪ソする直前に私が大臣室でソ連問題について話し、そのとき晋三氏は父の秘書として同席された。その後も首相の晋三氏とは何回か意見交換しているが、わが国の政治家でこの父子ほど平和条約締結に強い熱意を抱いている政治家を私は知らない。

 ≪基本政策と整合性がとれない≫

 さてこの9月の「一切の前提条件なしで平和条約を年末までに締結」というプーチン大統領提案を受けての14日の日露首脳会談での安倍首相の提案だが、その基本は1956年の「平和条約締結後歯舞群島と色丹島を日本に引き渡す」とした日ソ共同宣言を基礎として平和条約交渉を加速させること、と首相も述べている。ここで幾つかの重大な問題点を指摘しておきたい。